居場所をください。



『2つ目はー』


会場が盛り上がる中、

沖野さんはそのまま続けた。


『正直どうでもいいのかもだけど

結婚したので東京を離れます!』


東京を離れる……じゃあ本当に

引退したら会うことはもうないのかも………


『そして3つ目!

今年もカウントダウンライブやりまーす!』


ここでまたも盛り上がる会場。

いいなぁ、私も行きたい。

私もカウントダウンライブやるらしいから

行けないけどさ………


『そして4つ目!

ここ、一番重要なんだけど

カウントダウンライブを終えたら

私、沖野美華は

芸能界を引退します。』


沖野さんは最後だけ真顔で

静かに言った。


会場はもう悲鳴に聞こえる声がちらほら。

私はもう声にならなかった。


『だからね、みんなと夏を過ごすのは

これで最後なんだ。


………私もね、女としての幸せ

ほしくなっちゃったの。

最後までわがままに付き合わせてごめんね。


10年間、ここでみんなと生きてきてきたからこそ

私は今そういう決断をできたの。

本当にありがとう。

あと少しだけど今年が終わるあと数ヵ月

私を見てくれたらと思います。』


沖野さんは少しだけ涙を浮かべながら

静かにそう言った。私ももう泣きそう。

泣きそうなのは私だけではなくて

もう泣いている人までいる。


『それでは!

この夏最後の曲、聴いてください。

"MY ALL"。」



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