居場所をください。


それからしばらく続いた沈黙を

また私が破った。


「明奈ちゃんってさ、

貴也の事好きだったでしょ。」


「はは、まさか。

私、誠の彼女だよ?」


「今はそうかもだけどさ。

本当はずっと好きだったんじゃない?」


「………なんでわかったの?」


「だって私、演技指導受けてるもん。

どうやったら片想いの女の子に見えるのか

そういう役もあったの。

明奈ちゃんがたまにそんな動きをしたから。

今は誠くんが一番好きなのかもしれないけど

でもどこかで貴也を忘れられてない

だから、本当は私の事もよく思ってないし

誠くんもそれに気づいてるから

貴也相手でも嫉妬と束縛をする

そうじゃない?」


「はは、そこまでバレバレなのかぁ。」


「誠くんにもね。」


「誠はずっと知ってたの。

私が貴也の事好きだって。

だけど貴也は全然だし、

いつか告白しようと思ってるうちに

貴也はどんどん遠くにいっちゃうし

どんどん会えなくなってった。

そんなときに赤堀沙耶香との交際報道が出て

そのときも誠が励ましてくれた。

だけどすぐに別れて、美鈴ちゃんと付き合った。

どうせまたすぐ別れるでしょって思ってた。

美鈴ちゃんって見た目ハデだし、

遊んでそうに見えたから。

だけどそんなことはなくてさ

貴也が実家に戻ってきてからも

ずっと美鈴ちゃんのことを気にかけてたし

おばさんも美鈴ちゃんのことが好きだった。

私の入る隙なんかなくて。


だけどおばさんが亡くなって、

貴也がかなり落ちて、私はずっと支えてきた。

………まぁ誠と一緒に、だけど。


だけど結局そんな貴也を復活させたのは

美鈴ちゃんだった。


結局私にはなんにもできないんだって。

貴也は今美鈴ちゃんでいっぱいなんだって。


そんなときに誠に告白されたの。

たまには俺の事も見てって。

その時初めて誠の気持ち知ってさ

まぁ寂しさもあったんだけど

それが純粋に嬉しくて、

少しずつでいいからって言われて

彼女になったの。

今では誠のこと、ちゃんと好き。

胸はって言える。

だけど、貴也になにもできなかった自分が

なんだか情けなくて。

幼馴染みで、一番近くでみてきたのは私なのに

貴也がずっと見てるのは美鈴ちゃんで

それがなんか悔しくて

恋愛感情なのかなんなのかよくわからないけど

まだ出会って数年の美鈴ちゃんに

貴也が取られるのが嫌。

ごめんね、こんなこと言って。」



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