居場所をください。



「でも美鈴ちゃん、新曲もお願いね?」


「あー、アルバムの…。

でもあと5曲だよ!まぁまぁ早いよね?」


「そうだね。

思ってたより早いかな。」


毎日仕事してると、日の流れも早い。

10月に入れば映画の舞台挨拶…

その前に宣伝もあるか。


「はい、会社到着。

ここからは歩いていくでしょ?」


「うん、すぐそこだしね。

ありがと。」


私たちはみんなで車を降り、

私と貴也はマスターのお店

"ポケット"へと向かった。


カランカランー


「いらっしゃい。」


「ハヤシ2で。」


「あ、私スープもお願い。」


「はいよ。」


私たちは、店に入るなり注文して、

それから席についた。

座るなり、今度はブログ用の写メ。

ほかにお客さんがいないからこその自由で。


「こうやっていつも写メとってるけど、

いつか誰かにバレたらどうするの?」


「看板もないし、こんなやる気のない店

バレるとは思えないけど、

マスターが一見さんお断りの店にするよ。

あの人、混んだら面倒だから。」


「……本当、経営者がそんなんでいいのかなぁ…」


「美鈴ちゃん?聞こえてるよ?」


「え、あ、ごめんね?あはは」


「でも本当、ドアに鍵つけて、

暗証番号わからないと入れない

みたいなシステムにしようかな。

インターホンつけてる店もあるみたいだけど

鳴る度にいちいち断るのも面倒だし。」


面倒だし、って……



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