居場所をください。
━━━━━━━━━━━━━━・・・・
「うわー、きれーい」
私たちが来たのは山。
紅葉がとっても綺麗だった。
「けっこう空いてるな。」
「平日だし、もう夕方だしね。
行こ!」
私は貴也の手を握って、
ヒールのまま山へ入った。
「よかった、コンクリートで。」
「だからあえてここにしたんだよ。
長曽我部さんから聞いただけなんだけどな。」
「長曽我部さんってなんでも知ってるよね。
あの人の頭はどうなってるのかなー。
私なんてさ、歌詞自分で考えてるくせに
ライブで間違えてばっかりだしさ。
貴也もすごいよね。セリフだって
いっつも完璧に覚えてるしさ。
今も必死に歌詞かいてるけど、
全然覚えきれてないもん。」
「そりゃ美鈴と俺じゃ、覚える量が違うから。
俺はさ、二時間の映画を何日もかけて
完成させていってるけどさ、
美鈴は二時間ぶっ通しで歌ってるわけだし
1回くらい間違えてもしかたねーんじゃね?
長曽我部さんだって、間違えてることを
きつく言われたことないだろ?」
「そう言われればそうかも。」
「ちゃんとやってるからだよ。
俺もさ、セリフは覚えてたんだけど
ぜんっぜん口回らなくてさ。
噛みまくって、ダメな日があって。
だけど、長曽我部さんは俺に怒らずに
飯行くかっつってさ。
頑張らないやつにはなにも言わないけど
でも頑張りすぎてると、自分に責任感じる。
頭もそうだけど性格もいったいどうなってんだか。」
「不器用だよね、ほんと。
私が睡眠障害になったときも
自分責めまくってさ。
……でも、そんな長曽我部さんだから
きっと私もここまで来れたんだろうなぁ…」