居場所をください。



━━━━━━━━━━━━━━・・・・


「うわー、きれーい」


私たちが来たのは山。

紅葉がとっても綺麗だった。


「けっこう空いてるな。」


「平日だし、もう夕方だしね。

行こ!」


私は貴也の手を握って、

ヒールのまま山へ入った。


「よかった、コンクリートで。」


「だからあえてここにしたんだよ。

長曽我部さんから聞いただけなんだけどな。」


「長曽我部さんってなんでも知ってるよね。

あの人の頭はどうなってるのかなー。

私なんてさ、歌詞自分で考えてるくせに

ライブで間違えてばっかりだしさ。

貴也もすごいよね。セリフだって

いっつも完璧に覚えてるしさ。

今も必死に歌詞かいてるけど、

全然覚えきれてないもん。」


「そりゃ美鈴と俺じゃ、覚える量が違うから。

俺はさ、二時間の映画を何日もかけて

完成させていってるけどさ、

美鈴は二時間ぶっ通しで歌ってるわけだし

1回くらい間違えてもしかたねーんじゃね?

長曽我部さんだって、間違えてることを

きつく言われたことないだろ?」


「そう言われればそうかも。」


「ちゃんとやってるからだよ。

俺もさ、セリフは覚えてたんだけど

ぜんっぜん口回らなくてさ。

噛みまくって、ダメな日があって。

だけど、長曽我部さんは俺に怒らずに

飯行くかっつってさ。

頑張らないやつにはなにも言わないけど

でも頑張りすぎてると、自分に責任感じる。

頭もそうだけど性格もいったいどうなってんだか。」


「不器用だよね、ほんと。

私が睡眠障害になったときも

自分責めまくってさ。

……でも、そんな長曽我部さんだから

きっと私もここまで来れたんだろうなぁ…」



< 3,523 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop