居場所をください。
「…私たちさ、お互いに
なんにも伝えてこなかったよね。
我慢ばっかりしてさ。嫌われたくなくて。」
「ガキみたいな恋愛してきたよな。
…………美鈴の話で悪いんだけどさ
美鈴と貴也って離れててもさ
ちゃんとお互いのこと想い合って
ずっと信じてて
あいつらの方がよっぽど良い恋愛してる気がする。」
「………そうだね。
私も信じて待てるように生らなきゃ。
…だからさ、行ってきなよ。
本当は心配で仕方ないんでしょ?」
「………すげー気持ち悪いこと言って良い?」
「はは、いいよ。なに?」
「美鈴を守るのはずっと俺でありたいんだよ。」
ずっと、なんて無理に決まってるけど。
だけど今だけ。あいつがまだ寂しい思いしてんなら
俺が一番に駆けつけたい。
「………俺、あいつの保護者だしさ。」
せめて、あいつが結婚するまで。
父さんにできなかったなら、俺が。
「ひかる、いい顔してる。
いいよ、私帰るからさ。」
「いや、帰さねーよ。」
「………え?」
「万が一があるから。
その時は頼むぞ、お巡りさん?」
俺はそれだけ言って
車の鍵と、美鈴が置いていった鍵を握りしめ
家を飛び出した。
美鈴を引き取ると決めたあの日、
俺はあの人に誓ったんだ。
愛がどういうものか、俺が教えるって。
もう二度と、あそこには戻さないって。
兄として、家族として
俺があいつの笑顔を取り戻すんだって。