居場所をください。



「置いてくなよ。」


「ごめんごめん。

なんか嬉しくって。

………どうなるかと思ったけど

帰ってこれたんだなぁって。」


さっさとエレベーターに乗り込み、

部屋へと急いだ。

なんとなく、早く安心したい。

外はやっぱりまだ怖かった。



そして部屋の鍵を開け、

貴也と一緒に部屋へと入った。


「貴也、ご飯食べるでしょ?

すぐ作るね。」


「………その前に」


貴也はそういって私に近づき、

手首に触れた。


「やっ…!」


「……美鈴?」


「あ……ご、ごめん…

お風呂の支度もしないと…」


「美鈴。」


「…なに?」


「やっぱりなんかあったんじゃねーの?

……その手首のアザは?」


「…なんにもないよ。

ただちょっと縛られてただけだから。」


「………美鈴。」


貴也はまた私に近づき、

今度は腕に触れようとした。


「イヤっ…!」


だけど、私は反射的に拒絶してしまった。


「あ…ご、ごめん…」


怖くない。

貴也は怖くない。

なのに…腕を触られるのが嫌だ。

さっきの和也の顔が思い出される。

………注射器を片手に笑ってる、和也が…


< 3,711 / 4,523 >

この作品をシェア

pagetop