居場所をください。
……そういえば、このマンションでも
あんまり人に会ったりしないなぁ。
前の住んでたマンションも、
今住んでるマンションも
人に会ったことないし
そういうもんなのかな。
…まぁ、今のマンションは
エレベーターが一基じゃないから
わかんなくもないけど。
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「…お邪魔します」
……長曽我部さんちについたのはいいんだけど
なんだか嫌な予感がまたする。
出されたままの靴を見れば
もはや予感が確信へと変わる。
「お、来たか。お疲れ。」
リビングのドアを開ければ
やっぱり料理を作ってる音がするのに
ソファに座ってる長曽我部さんと
その横に座る、弘希。
この二人がソファにいるってことは
この料理をしてる音が発する先に
誰がいるかだなんて、見なくてもわかる。
「……なにか用?」
「用がなきゃ俺んちで飯を食わない
……なんてことはないよな?美鈴。」
……そうだけど。
今まで散々用もないのに
ここでご飯を食べてきたけど。
………でも、なんでこのメンバーで
私までいなきゃいけない?
弘希だけならまだしも……
「いらっしゃい。」
……この人までいるこのメンバーで。
「…こんばんは。」
まだこの人の家でもないのに
"お邪魔します"何て言いたくなくて
当たり障りのない挨拶を返した。