居場所をください。
「……私の友達で、チケットのために
何個もファンクラブ番号をもってる人がいる。
お金を掛ければチケットがとれるっていうのも
私的には嫌だけど、それでもまだ
ルール違反じゃない。
そこまでお金をかけてくれてる人もいる。
……だから、私はその程度の人に
来てほしいなんて思わない。
どんなに人気な日でも必ず当日券はある。
朝早くからになっちゃうけど
並べば買えないことはない。
来たいなら正当なやり方できてください。
……失礼します。」
生意気とか、失礼なやつとか
なんて思われても構わない。
私は、私を応援してくれる子を
最優先に考えたいんだ。
「……ライブに来たいなら、ツアーだってある。
わざわざ倍率が高くなる
カウントダウンにする必要はないはずです。」
そういって私はリビングのドアを開けた。
気分が悪くなる。
長曽我部さんも長曽我部さんだ。
自分の惚れた女には甘やかすのか。
転売対策を必死に考えたのは
長曽我部さんじゃないか……
「ちょ、待った!」
「……なに。」
「席はなくてもいい。」
「……は?」
「立ち見でいい。後ろでいい。
頼むよ。」
「……なんで?」
「俺が仕事してるところなんて、
今まで見せたことがないんだよ。
……美鈴が来てから、俺の仕事は
ほぼ美鈴のことだった。
美鈴こそが俺の仕事の結果なんだよ。」
……つまり、私から外れる前に
見せられるところを見せたい、と。