居場所をください。
「とにかく、私たちは大丈夫だよ。」
「なにを根拠に言ってんだか…」
長曽我部さんはそういって、
そこにつけられた車のドアを開けてくれた。
「私たちはお互い、
贅沢な望みはできないから。」
私はそれだけ言って、車に乗り込んだ。
仕事で会えないとか、忙しいだとか
私たちはそんなことで
離れたりはしない。絶対に。
ひとりじゃない幸せを
分かち合える関係なんだから。
いつだって不安で
いつだって寂しくて
居場所のない迷子だった私たちは
たとえ結婚したとしても
求めるものは決して変わらない。
帰れる場所があるって
素晴らしいことだよ。
「じゃあ閉めるからな。」
佐々木さんが私のとなりに座って、
長曽我部さんはドアを閉めた。
「……ところで今からなんの仕事?
どこ行くの?」
結局Tシャツとパーカーしかないし。
寒いし。
「着けばわかる。
その間に髪の毛やってろ。」
……なんだそれ。