居場所をください。
去っていく沖野さんに
私は最後まで、頭を下げた。
「美鈴、俺らも帰ろう。」
「長曽我部さん…
……あのね、長曽我部さん。」
「ん?」
「……結婚おめでとう!」
私は知ってた。
送り出される側の気持ちを。
決して離れていかないって
そう誓って、私は自分の場所から離れた。
だから、私も心から笑顔で
長曽我部さんを送り出したかった。
「…ありがとう。」
「社長になるために頑張ってね。」
「あぁ。」
「帰ろっかな。」
私はそういって、ステージを降りた。
もう長曽我部さんの手は握らない。
歌手・五十嵐美鈴として
長曽我部さんにはもう甘えるわけにはいかないから。
「…あ、橋本さん!」
そしてすぐそこにいた
沖野さんの元マネージャーさんに
話しかけた。