居場所をください。




「ウェディングドレスかー。

早く着たいな~。」


「あ、式に誰呼ぶかも決めないとだな。

大きくすんのか、小さくするのか。」


「そりゃ絶対小さくだよ。

私側で呼ぶ人なら私が社長の子供だって

みんな知ってるからやりやすいし。」


「俺側なんてどうせ呼ぶやつそんないないしな。」


「本当に小さく小さくやりたい。

そしたら私、社長もバージンロード歩くわ。」


「はは、やめとけよ。

絶対調子のるから。

長曽我部さんにしとけって。」


……やめとけよ、か。

調子のるから、か。

なんか、貴也と社長って

本当に仲良しだよね。

……貴也の、最初のマネージャーで

今でも貴也の子守り役は

社長なんだもんな。


……私も、長曽我部さんとずっと

そんな関係が続いたらいいな。


変わらず、ずっと……


「…どうした?」


「んー?

貴也って社長のこと好きなんだなー

って思っただけ。」


「はー?

まー確かに社長との時間は長かったし。

ガキの頃はよく宿題教わったりもしてたし

まぁ長曽我部さんと美鈴みたいなもんだしな。」


「そういえば社長が社長になる前は

貴也は社長のこと、なんて呼んでたの?」


「おい、とか

おっさん、とか。」


「なにそれ、ひどいね。」


「物心ついた頃からずっと一緒だったし

まぁ遠慮なかったわな。

社長が社長に就任した頃には

俺ももう中3だったし

社長って呼ぶようになってた。

皮肉の意味も込めて。」


「へー、そうなんだ。

その前の社長さんはどうしたの?」


「その前の社長と、あと会長は

事故で突然逝っちゃって。

だから急遽社長が社長になったけど

会長の籍が空いてるから

早い内にここの社長が会長になって

長曽我部さんが社長になるって感じだな。」


「ふぅん、そうなんだ…」


「ここの事務所は長曽我部家系が

代々社長になるから方針が変わらなくて

やり易くていいよな。

次が長曽我部さんならまた

何十年先までは安泰だな。」


「長曽我部さんが社長かぁ…

じゃあ長曽我部さんが社長になったら

長曽我部さんのことを

社長って呼ぶようになるのかな…」


「さぁ?別に強要されないし

好きに呼んでいいと思うけど。

長曽我部さんは美鈴には

一段と甘いしな。」


「一段と厳しいの間違いでしょ。」



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