居場所をください。



とりあえず打ち上げが開始となり

佐藤さんは私からマイクを奪うと

そのマイクは長曽我部さんに渡された。


「えー、ここは20時までです。

時間厳守でお願いします。

喫煙ルームはトイレの横にあります。

二次会はありません。

途中退席は一言声かけをお願いします。」


と、きっちり業務連絡を入れた。


「あ、そうだ。美鈴ちゃん、

今日俺早く帰らなきゃなんだけどいい?」


と瞬がこちらへと来た。


「全然いいよー。」


私の周りにはマネージャーさんたちや

長曽我部さん、ダンサー、バンドさん

そして貴也や隼也、高橋、亜樹、弘希と

お馴染みのメンバーが固まっていた。


貴也は私のとなりに座るかな?と思ったけど

長曽我部さんのいる小さなテーブルへと移り

たぶん、明日の打ち合わせをしている。


「なぁ、美鈴。」


そんな空っぽのとなりには

なぜか高橋が座った。


「なに?」


「美鈴に相談すんのもどうかと思うけど

まぁ一応友達として意見聞きたいんだけど」


「なに、さっさと言ってよ。」


「バイトしねーかって誘われたんだよね。」


「誰に?なんの?」


「お前のマネージャーだよ。」


「え?え、佐藤さんってこと?」


「いや、あっち。」


「…なんだ、長曽我部さんか。

長曽我部さんはもう

私のマネージャーじゃないけど

でもなんで?なんのバイト?」


「またビデオ係。会場外で。」


「あぁ、いいじゃん。

確かに人いないみたいだしね。

亜樹も?」


「そう、亜樹も。

美鈴のツアーに同行しないかって。

まぁでも実際俺ら大学生だし

遠いとなかなか大変だったりしねーのかなって。」


「そうだねー…

今年どこ行くのかまだ聞いてないけど

でも北海道とかだと

その日に帰るにしても遅くなっちゃうかも。

でもツアーの場合、初日と最終日以外

ライブ後のビデオは確か

撮ってないと思うよ?映像なかったし。

土曜日は泊まるけど日曜日は帰るってなるなら

やっぱ大変だとは思うけど

日曜日は17時開演だし東京に帰れなくはないし。

だから高橋が大変ならやめればいいし

やってみたいならやってみてもいいんじゃない?

としか友達としては言えないけど

あとメリットと言えば

いろんなところにタダで行けて、

タダでご当地飯が食べれるってことかな。

私のおごりになるんだけどね。」


そこに高橋がいたら絶対に楽しい気がする。

それなら長曽我部さんがいなくても…

……でも、自分の利益だけで

そんなことは言えないよね。



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