居場所をください。
「デメリットで言えば、
ツアーが始まってから終わるまで
確実に土日や連休は潰れるってこと。
一回引き受けたら途中では下りられないし、
来年も、再来年もって続くかもしれない。
他のバイトよりは楽に稼げると思うけど
その分、デメリットも大きい。
だからよく考えてね。」
終わりが見えない、この世界。
高橋にやりたいことがあるのなら
大学に集中してもらいたい。
立派な先生になってもらいたい。
…だから、高橋にはちょっと
大変なことかもしれない。
「でもさ、裏を返せば
平日は働かなくていいってことだよな?」
「え、まぁたぶんね?
ライブの日だけだと思うから。」
土日祝日、年末年始以外で
ライブはやらないだろうし……
「ならやろっかな、俺。」
「え、ほんとに?いいの?」
「だって日給1万って言われたし。
今回も実際1日三時間くらいしか
働いてないしさ。
それに大学に入って研修とかあっても
どうせそれ平日だし。
実際やってみて楽しかったしな。
俺も自立しなきゃだし。
そうなったら金もいるしなー。」
「…そっか。
じゃあお願い!大学生の間だけでも
なかなかできない経験だと思うしね。
先生に役立つことはないだろうけど。」
「でも履歴書にそんなこと書けるやつ
なかなかいないと思わねー?
今回はちゃんとバイトとして契約するし。」
「はは、確かに。
ってかそもそもバイト雇ったこと
あるのかなー、ここ。」
「でも本命は俺じゃなくて亜樹っぽいけど。
亜樹にこっちの世界の楽しさわかってもらって
会社を継いでもらいたいからって言ってたし。
俺がいたら亜樹も引き受けそうじゃん?」
「あー、なるほど。確かに。」
でも私、亜樹の前で苦労ばかり見せてきたよ。
歌詞がかけない、って。
……そんな私を見て、亜樹はどう思ったか……