居場所をください。

今年とまたひとつ、物語が始まっていく。



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「あー、お腹すいた!

もう13時じゃん!」


「お前が遅刻するからだろ。」


「それはなにも言えません。

今日の日替わり定食なにかなー。」


お昼休み

私たちはみんなで食堂へ移動する。


「そういや美鈴、

言ってなかったけど今年は

アリーナツアーじゃなくて

スタジアムツアーだから。」


「え、スタジアム!?」


「そ。気合い入れてけよ。」


「でも、そんなに入るかな…」


「入るよ、大丈夫。

今のお前なら大丈夫だよ。」


「……じゃあ、頑張らなきゃ。」


「一緒にな。」


そういって隣で微笑む長曽我部さん。

もう、こうやって

毎日を共にすることはないと思ってた。


だけどまたこうやって

一緒に打ち合わせをして

一緒にお昼ご飯を食べる。


「美鈴ちゃーん!

一緒に食べよ!」


「いいよ!」


いきなり怒られてばっかりだけど

それでも、そんな毎日が

やっぱり私には特別なものばかりで


「あ、今日の日替わり、から揚げだ!

これにする!」


いつまでも長曽我部さん離れができないけど

そんな私も、嫌いではないんだ。


「ダメだ。サラダうどん。決定。」


こんな当たり前な日常が

私は大好きだから。

こんな当たり前な日常が

私の居場所はここなんだと

再確認させてくれるから。


「えぇ!!

……長曽我部さんの鬼!!」


「いくらでも言え。」


そして、どんなに時が経とうと

どれだけ喧嘩しようと

どれだけぶつかってしまったとしても


変わってしまう現実ばかりの中


「ま、ここのサラダうどんは

安定の美味しさだけどね。」


「美鈴、いっつもそれだもんな。

冬なのに。」


「いいじゃん、好きなんだから。」


変わらないものが

ここには確かに存在するから。




居場所をください。 E N D
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