居場所をください。

それから美鈴が飯を完食し、体調が平気そうだったからそのまま俺は美鈴を病院へ連れていった。
うちの事務所のやつらが通う、産婦人科へ。


そこでやっと俺は旅行よりも前の行為で妊娠したんだろうと聞かされ、やっと納得した。
もうすでに妊娠２ヶ月、10週目。
そりゃ妊娠検査薬反応するわけだ。つわりも始まるわけだ。


そして「激しい運動は避けてください」と、何度も釘を刺された。俺が。

……いや、まぁ俺がさせてきたんだけださ…


とりあえず心音も確認でき、ひと安心らしく
美鈴はかなり浮かれモードだ。


「あの、」


そんな美鈴はまだ内診室から戻ってきていないから、今のうちに大事なことを聞いておかなければならない。
管理者として、保護者として、兄として。


「産後２ヶ月、３ヶ月での運動は危険ですか？」


「全てが危険なわけではないですよ。
まずは１ヶ月、母体をしっかり休ませることが大事です。
そして１ヶ月検診で異常なしと言われたら、ストレッチやヨガ等から始めてみてください。
産後６ヶ月は一番痩せやすい時期なので、２ヶ月、３ヶ月から運動を始める方は少なくありません。

ただし、やりすぎは禁物です。」


「やりすぎとは、具体的にどのくらいでしょう？」


「美鈴さんは普段、どのくらい動いていますか？」


「腹筋は毎日350回。
恐らく昨日もやったと思います。
暇な日は10キロ～20キロのランニングもします。」


「それは完全に過度の運動に値します。
腹筋は30回から徐々に増やしていくように指導してください。
最初はランニングではなくウォーキングで、３キロほどにしましょう。」


「それはいつまで続きますか？」


「そうですね。５、６ヶ月くらいにはいつも通りできると思いますが、とにかく３ヶ月くらいまでは軽い運動、それこそ近所をお散歩程度でも十分なんです。
授乳期間はなるべく激しい運動は避けた方がいいので、激しい運動をする場合は母乳からミルクへ移行された方が負担がありません。
母乳はかなりカロリーを消費しますので。」


とにかく、そこらへんに関して無知すぎる俺は短時間であらゆる質問をし、メモをしていった。

そして最後に

「来年10月から、ツアーには回れるでしょうか。
8月から本格的な練習に参加させてもいいのでしょうか。」

一番大事なことを聞いておいた。


「本人がやる気があるなら大丈夫です。
一番大事なことは、母親になる美鈴さんがストレスを溜めないことです。」


「わかりました。」