居場所をください。



それから数ヶ月して念願の娘が生まれて
美鈴はもちろん、俺も社長もデレッテレだ。


「社長、もう20時です。
早く帰ってください。
長曽我部さんがきっと待ってますよ。」


「でも咲空(さら)はまだいてほしいって」


「気のせいでしょ」


……社長なんて呼びながら、美鈴が社長に対する態度もひどいもんで。


「言っとくけど、子供達にじいじだなんて教えないでよ」


「えーー」


「そんなことで社長の不倫がばれたらどうすんの。
子供達も堂々と甘えられないなら知らない方がいいの。

あくまで、私と貴也がお世話になってる社長ってことで」


社長に向かってこの態度。
まぁ社長として扱ってる訳じゃないんだろうけどさ


「……まぁいいや。
それより美鈴、友達の結婚式まであと半年だろ?
新曲のレコ撮りはいつするんだ?」


「んーと、五ヶ月後にスタジオおさえたよ。」


「またイギリスか?」


「うん!音が全然違うから。
オケ使うから時間はかかるけど、先撮りしてもらって、最後に私のをとるようにするよ。

とりあえず一ヶ月間は休んで、それから体作って喉作って、そのあと曲作ってくかな。」


美鈴は五周年を過ぎてから、CDは完全自主制作となり、レコーディングのたびにイギリスへと渡航する。

母親になってもプロ意識は健在だ。


子供たちに会えないのはかなり寂しいらしい、けど

帰ってきてからのデレデレ具合はすごい。本当に、数年前の美鈴で考えられないくらい
あまーーい顔をする。


「あ、そうだ
ねぇ社長。次の曲発売したらテレビ出たい。」


「は?まぁ会社としてはいいけど…
でもなんでまた急に。」


……たしかに。あんなにテレビ嫌ってたくせに。


「ほら、私レコーディングの度に数日家を空けるでしょ?
貴也も舞台の地方公園の時とか、地方での撮影の時は家空けたりするけど、でもそれをテレビで見てるかは子供たちは割りと納得できてるんだけどね

……たぶん私がなんの仕事してるか子供たちはわかってないと思うんだよね。
朝陽とかさ、知識がついてきた分、私がなんの仕事してるかよくわかってないのに、私が仕事で家を空けるから嫌がってて…

だから、子供たちに私の仕事してるとこ、みてほしいなって。
まだライブに連れていくわけにはいかないから。」


「……そうか、わかった。
俺の方からひかるに伝えとくよ。」

「うん、ありがと!」


……朝陽、か。
確かにな…なんの仕事してるのか聞かれても、歌を歌ってる、じゃなかなか難しいのかもな…



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