居場所をください。
私たちは小さな会議室に入り、長曽我部さんは鍵を閉めた。
「誰に聞いた?」
「えーと……………叔母?」
「そうか。
どこまで聞いた?」
「私の母と父の出会いと
母が亡くなったことと父の名前。
父に子供がいること。」
「そうか。
俺が美鈴のことを知ったのは小学生の頃。
美鈴の母親が美鈴を抱えて家に来た。
その時話を聞いたんだ。母さんとな。
俺はその時は子供だったから理解できなかったけど
俺に妹がいるんだ、ということは知った。
その時名前はわからなかったから
帰っていくおばさんを引き留めて名前を聞いたんだ。
その子名前なんて言うの?って。
そしたら優しく微笑んで"美鈴"って答えた。
"五十嵐美鈴"って。
それからおばさんに会うこともなかった。
当然、美鈴に会うこともな。」
「……………あの、私は会えないの?」
「父さんに?」
「……………うん。」
「叔母さんから俺の親父の仕事のこと聞いた?」
「会社経営してて跡取りだって。」
「で、その息子の俺も跡取りなわけ。
そろそろわかるんじゃね?」
「……………社長?」
「そう。」
「えぇ!?じゃあ社長もわかって……………」
「それはないだろうな。
名前を知らないから。」
「……………娘の名前を?」
「そう。
だから贔屓してたわけじゃねーから。
ここまできたのは実力だよ。」
「そっかぁ…。」
社長が私の父親、か。