居場所をください。
『今回の曲はどんな曲ですか?』
『んー、まぁいつも通り内緒です』
と、美鈴はいつも通りの言葉を司会者に返す。
どんな曲なのか?それは聴いた人それぞれの感じ方で、というのが美鈴のスタンスだ。
『でもTogether aliveは大切な人を思い浮かべながら書いた3曲が収録されているので
大切な人との出会いや軌跡を思い出しながら聴いていただけたらと思います。』
『今日は新曲のTogether aliveとmotherの2曲を披露されるとのことですが』
『今日は久しぶりのテレビなのでちょっと緊張しますけど
子供たちが家でパパと見てくれていると思うので、頑張って歌います』
……2曲も歌うのか。
1時間番組なのに美鈴にどんだけ尺使うんだよ。
しかもTogether alive3曲収録か。はじめて知った。
……CD、あんのかな。明日探してみるか。
『それでは、五十嵐美鈴さんで
Together aliveとmother、2曲続けてお聴きください』
アナウンサーがそういうと、すっかりスタンバイ済の美鈴が相変わらずのキラキラマイクを握りしめていた。
『あの日 僕らは同じ紙を広げた
そう これから先僕らはこの紙に
僕らだけの地図を描いていく』
静かなピアノの音と共に、美鈴の声がそう広がる。