居場所をください。
「父さんは美鈴のことを何も知らない。
でも自分の娘があの施設にいたことは知ってる。
だから俺は公表しないことにしたんだ。
ま、いつかは言ってもいいけど
今は秘密だ。
俺と美鈴が血縁関係だということも
絶対ばらすなよ。
俺は美鈴が妹だから売り込んでる訳じゃない。
だけど周りはそうは思わなくなるからな。
美鈴は社長の子供だから、と思うだろうな。
俺の立ち位置も、社長の子供だからって思ってるやつもいる。
だから信頼できるやつ以外には言うな。
ちなみに、施設長は知ってるよ。
俺が話した。」
「……………そっか。
うん、黙ってる。
長曽我部さんが私の兄かぁ…。」
あの無駄に安心する感じも
血が繋がった兄だからなのかな…。
「ふふ、嬉しいや。
私に兄弟がいたなんてね。
お母さんは死んじゃったけど
それでも居場所はここにあったね。」
1度止まった涙がまた溢れてきた。
「泣きすぎ。
さっさと飯食わねーとレッスン始まるけど。」
「ふふ、そうだね。」
私は涙を拭いた。
「行くか。」
長曽我部さんは私の頭にポンと手を乗せて
ドアに向かった。
「じゃあ奢ってね、お兄ちゃん!」
と私が後ろから抱きつくと
ドン!
と長曽我部さんがドアに激突した。
「いって!お前な!
しかもその呼び方は禁止だ!」
「はいはい、わかりました!」
もう嬉しすぎてなんでもいい。
「ったく…。」
呆れながら鍵を開けて食堂へ向かった。
「あ、おでこ赤いよ。」
「は?まじかよ。
美鈴のせいだろ。」
「私じゃないよ。
長曽我部さんの踏ん張る力が弱いから。」
「あれは誰でも激突するわ。
美鈴のタックルが強すぎて。」
「タックルとか!ひどいよね、本当。」