居場所をください。
翌日ー
「お疲れ。」
仕事を終えた俺はさっさと喫茶店に向かった。
「いらっしゃい。」
「コーヒー。」
「はいよ。」
俺はいつもの席に座った。
「なんか顔つき変わったな。」
マスターが話しかけてきた。
「俺?」
「他に誰がいるんだよ。」
「まー、やっと前進んだって感じ。」
「ふーん。」
そこに沙耶香がきた。
「ごめん、お待たせ。」
「いや、全然待ってねーよ。
なんか飲む?」
「じゃあレモンティを。」
「かしこまりました。」
沙耶香がまだ2回目だからか
マスターは沙耶香にまだ営業スマイルを使う。
「急にどうしたの?用事?」
「ちょっと話あって。」
「話?」
「……………俺と、別れてくんない?」
少し沈黙になった後、俺が言った。
「え…なんで…?」
「やっぱ沙耶香の事好きになれない。」
「でも…まだこれから…。」
「どうしても忘れられないやつがいる。」
「……………好きなの…?」
「……あぁ。
悪いんだけど、付き合ってるふりに戻ってほしい。」
「なんでまたふりなの?」
「事務所に言われたから。
公表してから早すぎるって。」
「……じゃあ付き合ったままでいいじゃん…。」
「もう嘘つきたくねーから。
そいつにも、自分の気持ちにも
沙耶香にも。ごめん。」
「……………どうしても?」
「もう決めたから。」
「……………やだっていったら?」
「それは困るな。
でも俺はもうお前に優しくできない。
そのレモンティを奢ることもな。」
「……………じゃあ付き合ってるふりもできない
っていったら?」
「……………長曽我部さんに相談する。」
「そっかぁ。そしたら私に圧が来るね。
貴也くんの方が事務所は大事にするから。」
「そんなことねーと思うけど。」
「そんなことあるよ。
貴也くんは事務所のトップだもん。」
「…付き合ってるふり、してくれんの?」
「考える。
とりあえず今日は彼女役やってあげるけど
私もそんな優しくないから。」
…だよな。
俺が都合良すぎなんだよな。
「ごめんな。」
「……………行こ。」
俺たちは店を出た。