居場所をください。
「うわ、長曽我部さんから呼び出し来ちゃった。
ごめん貴也。先戻るね。」
「わかった。頑張れよ~。」
「ありがと!またね!」
美鈴は金をおいてさっさと出ていった。
別に俺が払うのに…。
「で、貴也。どうだったんだよ。」
「…末期がん。もう助からないってさ。」
「……………そうか。」
「母さんはあの家を売る気だ。」
「あの家を?」
「俺も耳を疑ったけどな。
本気らしい。」
「そうか…。」
あの家は父さんがデザインして
父さんが建てた家だ。
母さんが言うほど古くはない。
なのに、売るなんてな…。
「まーでも俺はそれでもいいと思った。
あの家を他の誰かが使ってくれれば
父さんの家は残るだろ。
俺んちじゃなくなってもな。」
「貴也はそれでいいのか?」
「……………まだわかんねぇ。
でもなー…」
俺はマスターにも俺の決意を話した。