居場所をください。
「たぶんさ、美鈴ちゃんの全てが羨ましいんだよ。
頭よくて一高に入ってさ
施設育ちだと知っても離れていかない友達がいて
長曽我部さんに拾ってもらって施設を出て
歌手としてデビューして人気が出て
新しい友達ができて彼氏ができて
居場所を作った美鈴ちゃんが羨ましいんだよ。
きっとあの子は寂しいんだろうね。
友達がいても施設育ちだと言えなくて
自分を偽って、誰も信用できなくて。
結局美鈴ちゃんの真似しかできないんだよ。
美鈴ちゃんの真似をして、でもうまくいかない。
だから強行手段に出た、って感じじゃない?」
「だからってあんなことしていいとは思えない。
私…行ってくる。」
「え!?いや、でも長曽我部さんは…」
「友達を困ってるのに放っておけるほど
私は冷たくないよ。
私は私、大丈夫だよ。」
「…いや、俺が長曽我部さんに怒られるから。」
「佐藤さんはいなかったことにすればいいし。
私が勝手にしたことってことで。
じゃ。」
私は藍子に向かって歩き出した。