僕は決して姉の彼氏を認めない!!!
いつもの日常はあっけなく崩れてしまった。
だが、僕はそれを必ず取り戻してみせる。
「姉貴、ちょっといい?」
登校前の姉はとてもぼーっとしている。
それなのに今日はやたらソワソワしていた。
あやしい。
「あっ、淳君。なに?ちょっと急いでるから手短に…」
「学校一緒に行こうよ!」
どうせ、お約束の付き合いたてにありがちな一緒に登校!!!
だろ!させるかっ!!!!!
「え、え、今日は一緒に行く人が…」
「実は…さ、新学期始まったばかりで友達っていう友達もいないし、姉貴に学校のこと聞きたいな」
僕は絶対に姉貴が断れないポイントを知っている。
少し困って、眉寄せて、視線を逸らし、共感できることをぼやく。
この4つが大切なポイントだ、このポイントさえ押さえていれば馬鹿でお人好しの人間なら断れないだろう。
「えーと、うーん仕方ないなぁじゃあ一緒に行く人には連絡しておくね」
予測通り少し困った顔で携帯をいじり始めた。
なんて馬鹿なんだ姉貴!
僕はこれからの姉貴の将来に幾許かの不安を感じながら、自分の勝利に酔いしれていた。
この世にはシスターコンプレックスという言葉があるが、僕は純粋に姉貴が好きなだけだ。
コンプレックスなどという言葉で片付けないでいただきたい。
ここで、1つ誤解を解いておくが決して恋愛感情ではなく、昔から面倒を見てきた立場としては可愛くて仕方ないのだ。
騙されやすく、正直ものの自分と正反対の生き物を愛でているといったほうが伝わりやすいのだろうか。
自分にない物を持っているやつが気になるという心理は誰にでもあるはずだ。
それを拗らせてだけで、決して恋愛感情ではない。
「じゃあ淳君いこうか?」
「おーけー」
僕と姉貴は慌ただしく玄関で靴を履き、母の行ってらっしゃいという声に見送られ家を出た。
「淳君と歩くの久しぶりじゃない?」
姉貴は嬉しそうだ。
彼氏との時間を邪魔したのだが、一抹の罪悪感も感じない!!!
「うん、ま、中学とは違って同じ学校だしこれから一緒に行こうよ」
「え、えーわたしにも友達と登校したりとか色々あるのよー」
顔を真っ赤にしながら言われてもバレバレだよ…
「へーぇー」
「あ、どーでもいいって声!もう話し聞いてあげないよー?」
「ごめんごめん」
そう言えば何の話も考えてなかったや
「んで?話って?」
「ま、まぁやっぱり新入学にありがちなクラスに馴染めない的な???」
「うそよー淳君友達多いじゃない!まさか女の子絡みじゃあ無いでしょうねー?」
「違うよ、姉貴は僕が彼女とかできたら気になる??」
「いや、気になると言うか、淳君が付き合う彼女になぜかわたし嫌われちゃうもん…それは気になっちゃうよ」
「別にそういうもんじゃね?」
しれっと答えたおかげか、案外考え込むことなく、そうかなぁと言って納得したみたいだ。
馬鹿すぎる僕の姉貴を作ってくれた母と父に感謝した。