ヒミツの関係
　霞は顔を背けたままで、あたしを見ようとしない。


　「霞!?」


　無理やり顔を覗こうとすると、霞があたしの肩を押した。

　その勢いで、地面に尻餅をつく。


　「いたっ！」

　
　ドサッという音と一緒に、あたしの口から言葉が漏れた。

　その瞬間、霞が反射的にあたしを見た。

　だけど、すぐにその目は逸らされた。

　
　「…霞？」


　尻餅をついた痛みなのか、なんなのか、あたしの目に涙が溜まっていった。


　「か、霞…どうしたの…？」

　
　声だけでなく、手足までもが震えてくる。

　目に溜まった涙で、周りがぼやける。

　霞がこっちを見てない間に、とすばやく涙を拭くけどすぐにまた溜まった涙でぼやける。

　目の奥が熱くなって、頭にもやがかかる。

　もう一度、霞を呼ぼうとしたとき、先に霞が口を開いた。


　「もう…終わりにしよう。」

　「…ぇ…？
　な、何を…？」


　分かってるはずなのに、聞いていた。

　霞が何を言いたいのか、何を終わらせたいのか、分かってるはずなのに聞いていた。

　
　「…分かるだろ？」


　
　うん…分かるよ。
　分かってるよ。
　だけど、信じたくないの。
　勘違いであって欲しいの。
　
　

　「…分かんないよ…」



　なんでそんな事言うのかが分からない。
　なんで今言うのかが分からない。
　だって、まだ合宿は終わらないよ？
　まだ一日あるんだよ？



　「耶奈…この関係、終わりにしよう。」

　
　霞が、あたしの方を見ないまま言った。

　あたしの頬を、瞬きをせず、必死に上を向いて堪えていた涙が一筋、流れた。

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表紙・目次

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