未来が見えない『Previously invisible』
⑤ 混んどく

✜✜ 目覚めない


あの夜、樹さんと話してから
10日が過ぎた。

平日の月紫は‥‥‥
日中は、幼稚園
帰宅後は、由依さんの家。

姉には
院長夫人と由依さんが
日中は交替で付いてくれて
由依さんが、姉の所にいる時は、
月紫は、ママと沢山話して
由依さんの家に帰る。

土・日は、
院長夫人が、姉と月紫をみて
月紫は、渡瀬家に帰る。
夜は毎日、俺が姉の病室に
泊まりこんでいた。




あの夜から
樹さんを見ることは
一度もなかった。


姉の話をしたからと
姉の元にいて欲しいわけでは
なかったが・・・
こうあっさり、なにもないと
俺が、過剰に考えてただけかと
思わざる得なかった。

まぁ、姉が、受入れるかも
わからないし……

脾臓破裂の手術もうまく行き
経過も良かった。
頭蓋骨陥没の手術も
うまくいった。

やはり、金井先生の腕は、
すごい。

顔の包帯も取り払われた。
まだ、腫れと打撲痕はあるが、
かなりよくなっていた。

今日は、由依さんが、
娘のほのかちゃんと月紫を
幼稚園に預けて
病室へ

「おはよう、たっくん。」
「おはようございます。
由依さん、いつもすみません。」
と、言うと

「あっ、また、すみません
って、言った。
私が、これるときに
来てるんだから、心配ないの
なんど言えばわかるの?」
って、叱られる。

その言葉を耳にしながら
俺は、仕事にいく
『姉さん、みんな優しいね』
と、心の中で姉に
語りながら・・・


由依さんは、
「琴音、おはよう。
顔も、ずいぶん綺麗になって
良かったね。
月紫は、毎日元気に幼稚園に
行ってるよ。
本当は、ママ、恋しいと思うけど
そんなこと、一言も言わないの。
だからっ、だから、琴音も負けるな。」
と、話した。

夕方、月紫は幼稚園バスを
病院で降りて、ママの病室へ
「あっ、おかえり、月紫。」
と、由依さん。
「ママ、由依ちゃん、ただいま。」
と、言って、ママと沢山話してから
由依さんと帰って行った。
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