未来が見えない『Previously invisible』
とうとう、華は、子供達とは
会うこともなく亡くなった。
進は、二人宛に手紙を書いて
いつの日か、見てもらえたら
と、乾先生に渡した。

それから、まもなく
進も亡くなった。

秋山の両親も
五十嵐の両親も
他に看取ってくれる人は
いなかった。


匠は、あの日から
弁護士の乾先生とは、
連絡を取り合っていた。
仕事が終わっても
乾先生は、姉を気にして
お見舞いにも
何度も来てくれた。
姉が、意識が戻ってからも
顔を見せてくれた。

姉の夫の樹さんにも会い
話をした。
姉が、全てを思いだし
姿を消したとき
戻ったときの話もしていた。

乾も
ずっと苦しんでいる姉を
助けきれなくて苦しんでいる匠の
事を考えると辛いものがあった。

だから、頼まれたときも
二つ返事で引き受けた。
だが、親の気持ちも
少しながら、わかるとこもあった。

だが、五年間、毎日暴力を振るわれ
唯一の肉親にも、見放された
琴音さんの行き場のない落胆
諦めは、いかほどだったのかと
思うと、致し方ない。
とも思う。

だから、
匠君が、思うように
琴音さんも琴音さんの家族も
匠君も、そっとしてあげたい。
と、乾は思うのであった。

匠は、樹と蓮には、
乾先生からの話は
相談して、自分の気持ちは、
伝えていた。
二人は、
匠が、思うようにしたら
いいと言ってくれていた。
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