私の途絶えた記憶の中で

「そろそろ帰るか」

爽真はそう言うと、私の前を歩き出した。

家に帰るのか。

早かったな。

時計を見ると 19時56分。

「ねぇ、爽真。
どうして私の過去を知ってるの?」

私はこのまま別れるのが嫌になり
気になっていた質問をしてみた。

「ちはるが教えてくれたんだよ」

私がそう言ったの?

私にはそんな記憶がない。

私には、そんなことを話したりできる親友というものはいなかった。

友達だけだった。上辺だけの。

嫌われたくない一心で話を合わせて、

したくもない化粧もして。

上辺だけの友達を作っていた。

心を許せる親友はいなかったはず。

なぜ、爽真には私の過去を話したんだろう。
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