私の途絶えた記憶の中で
存在
それから私は何も言えないまま爽真と別れた。
いや、別れようとした。
「あれ?爽真の家もこっち?」
私の家と同じ方向に歩く爽真に尋ねた。
「何言ってんの(笑)俺たち一緒に住んでるじゃん。」
爽真は少し困ったような、さみしそうな顔をしながら微笑んだ。
「……。ごめんね。何も思い出せなくて…」
爽真をこんなにも苦しめて
こんなにも笑顔を無理やり作らさせて
最低だな、私。
でも、高校生で同棲はかなり驚いた。
家賃とか、どうなってるんだろ。
「家の場所は覚えてる、よな?」
そう言って爽真はある一軒の家の前で止まった。
「え!?一戸建て!?」
私は驚いた。
そこには新築であろう一戸建てがあったからだ。
「ちはるがデザインしたんだよ。俺の為を思って設計された家。俺はこの家が大好きだったんだ。」
私がデザインした……?
また新しい情報が入ってきた……。
確かに私は高校の建築設計科に通っている。
もう、デザインできるぐらいになってるんだ。私。