私の途絶えた記憶の中で

カチャ

爽真がドアを開けてくれ、私は家の中に入った。

玄関の右側には白く、木目が綺麗な天井まである高い靴箱。

真ん中は空洞になっていて花瓶や鍵掛けなどが置かれている。

……あ、写真立てが倒れてる。

私がそれを立て直そうと手を伸ばすと爽真がさえぎった。

「俺が後で直しておくから。」

その言葉はこの写真を見て欲しくないような、そんな感じが漂っていた。

「……わかった。」

私はあまり気にしないことにして、開けるとリビングであろう扉へ伸びる廊下を進んだ。

その扉を開けると、私は息を呑んだ。

私の思い描いていた家、そのものだったからだ。

対面式のキッチンに、
天井にはシーリングファン。
バルコニーも、
2階へ伸びる螺旋階段もある。
家族みんなで食事ができる可愛らしい木のテーブルに、
大きなテレビ、ふわふわのソファ。

全てが思い描いていた夢の家。

「すごい……。」

私はただただ感動するしかなかった。
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