私の途絶えた記憶の中で

カサラギ商店街は、いつもと変わらずこの時間帯はタイムセールのお惣菜を買うサラリーマンなどで賑わっていた。

爽真と私は、カサラギ商店街の中腹まで歩いていた。

「ここ。」

爽真はいきなり立ち止まった。

《らぁめん さかづて》

と、その店ののれんに書いてあった。

「爽真、ここのラーメン、食べたかったんだね。」

カサラギ商店街に来た理由がわかった私はそう言った。

「あの時も、ここで食べるつもりだったんだよ。ちはるが食べたいって言ったから。」

……私が? あの時……?

あの時っていつだろう。

それさえも思い出せない自分がもどかしい。

どうして、忘れちゃったんだろう。
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