わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 彼女はわたしを見て、この人もと言っていた。ということは彼女は仁美のファンなのだろうか。

 もっともわたしも最初は彼女のファンだったわけだが、彼女の言ったことは間違っていなかった。

 彼女の言葉を肯定しようか迷っていると、彼女は唇を結んだ。

「あなたはどんな仕事をしているの?」

「今はまだ仁美のアシスタント的な仕事がほとんど」

「そういえばあなた、絵だけはうまいって聖から聞いたけど、そういう仕事をしていたのね」

「うまいといっても、わたしの事務所の中ではそうでもないけどね」

 それは謙遜でもない、本当のことだ。

「でも、よく仁美の絵ってわかったね。タッチも変えているのに」

「そんなの見たらすぐにわかる」

 彼女はそうさらっと答えた。

「俺が高橋さんのことを知っていたのも、茉優の影響だよ。彼女、インタビューされた雑誌とか買うくらいのファンだから」

「聖、変なことを言わないでよ」

 彼女は頬を赤らめ、そう言い放つ。

「仁美が聞いたらら喜ぶと思うよ」

 わたしは一気に親しみやすくなった彼女を見て、思わず笑ってしまった。

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