わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 それに彼には、彼を思う幼馴染の存在がいるのだ。ただ会いたいから。そんな利己的な理由で誘うのは難しい気がした。

「この近くに縁結びの神様がいる神社があるんだって。明日、行ってみようよ」

「いいけど、仁美は松永さんとのことでもお願いするの?」

「何を言っているのよ。ほのかのことでしょう。いい出会いがありますようにって」

 わたしのからかいに彼女は顔を真っ赤にして反応した。

「そうだね。でも、そういうのはあまり効果があるとは思えないんだけど」

「いいじゃない。幸せを望むだけでも楽しくなるでしょう」

 そう仁美は明るく言い放った。そういうセリフを聞くと、やはりわたしと彼女は根本から違うのだと感じてしまう。結果ではなく、ただ気持ちという不確かなものに幸せを求めているのだ、と。

「仁美って今まで彼氏がいたことあるの?」

「いるわけないじゃない」

「ほしいと思ったことは?」

「ないよ」

 彼女は手にしていたオレンジジュースを一気飲みした。

「でも、なんとなく陸人と結婚するんだろうなという気がする。少なくともわたしの両親はそう思っているみたい」

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