わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「仁美、誰にそんなに買うの?」
「陸人と、両親と」
彼女は指を折りながら、個人名を列挙していった。交友関係が広い彼女ならではだろう。そう納得していると、彼女は心なしか胸を張り、自信たっぷりにつげた。
「で、あとは自分の分を買おうかな、と。三つほど。どれがおいしそうかな。両親と陸人の分はわたしも食べるから、それはかぶらない範囲でね」
「松永さんにあげたのも食べる予定なんだ」
「絶対陸人はわたしにもくれるもの」
そう言った仁美は、何かを思い出したのか言葉を漏らした。
「分かった。岡本さんに買うんでしょう」
わたしは自分の顔が引きつるのに気付いた。だが、ノーとは言えず、首を縦に振った。
「この前、ごはんをおごってもらったから、お礼にと思って」
「いいじゃない。きっと喜んでくれるよ。ほのかは岡本さんの名前が出てくると嬉しそうだね」
「そんなことないと思うけど」
わたしの口調は徐々に小さくなっていった。ないと断言できなかったのは、彼の名前を聞いても嫌な気が全くしなかったからだ。そもそも苦手な人にお返しをしようとは思わないだろう。
「陸人と、両親と」
彼女は指を折りながら、個人名を列挙していった。交友関係が広い彼女ならではだろう。そう納得していると、彼女は心なしか胸を張り、自信たっぷりにつげた。
「で、あとは自分の分を買おうかな、と。三つほど。どれがおいしそうかな。両親と陸人の分はわたしも食べるから、それはかぶらない範囲でね」
「松永さんにあげたのも食べる予定なんだ」
「絶対陸人はわたしにもくれるもの」
そう言った仁美は、何かを思い出したのか言葉を漏らした。
「分かった。岡本さんに買うんでしょう」
わたしは自分の顔が引きつるのに気付いた。だが、ノーとは言えず、首を縦に振った。
「この前、ごはんをおごってもらったから、お礼にと思って」
「いいじゃない。きっと喜んでくれるよ。ほのかは岡本さんの名前が出てくると嬉しそうだね」
「そんなことないと思うけど」
わたしの口調は徐々に小さくなっていった。ないと断言できなかったのは、彼の名前を聞いても嫌な気が全くしなかったからだ。そもそも苦手な人にお返しをしようとは思わないだろう。