わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「じゃ、味見してから選ぼうよ」

「味見って、そんなの」

 中には味見用と思しき、別容器に入ったお菓子もあるが、それはほんの一部だ。

 仁美はいくつかを手に取って、レジに向かう。

 意味が分からないわたしを見て、仁美はにっと微笑んだ。

「今から買ってみて食べるんだよ。できるだけおいしいのを選びたいでしょう」

「夕ご飯食べたばかりじゃない。もうそんなに食べられないよ」

「大丈夫。わたしは食べられるから。甘いものは別腹と言うでしょう」

 そんな惜しげもない行動をする仁美を見て、わたしはやっぱり彼女には敵わないと思ってしまった。


 仁美との旅行はそんな感じで仁美に圧倒されつつも、楽しい時間を過ごせた。


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