わたしは元婚約者の弟に恋をしました
わたしは携帯を握りしめると、じっと画面を見た。あと送信のボタンを押せば、終わるはずなのに、最後の一押しができない。
「もう五分経ったよ」
仁美は呆れ顔でわたしを見ていた。
旅行から帰った翌週の昼休み、彼におみやげを買ったから渡したいとメールを作成したものの、送信できずにいた。メールを作成したのが、仁美の言っていた五分前のできごとだ。
「わたしが送ろうか?」
「自分で送れる」
手を差し出して、携帯を催促する仁美の申し出を断った。
「そんなことばかりしていると、賞味期限が過ぎちゃうよ」
「一か月以上あるから平気だよ」
「一か月も前のお土産を渡したいとメールで送るほうがおかしいよ」
仁美の言っていることは分かるが、どうも踏ん切りがつかない。
「あと十分で休みが終わるんだけど」
「もしかすると仕事中かもしれない」
「だったら電源切るなり、マナーモードにするなり、何らかの措置はしているでしょう」
仁美は立ち上がるとわたしのところまでやってきた。そして、送信ボタンに触れているわたしの親指を上から押したのだ。
「もう五分経ったよ」
仁美は呆れ顔でわたしを見ていた。
旅行から帰った翌週の昼休み、彼におみやげを買ったから渡したいとメールを作成したものの、送信できずにいた。メールを作成したのが、仁美の言っていた五分前のできごとだ。
「わたしが送ろうか?」
「自分で送れる」
手を差し出して、携帯を催促する仁美の申し出を断った。
「そんなことばかりしていると、賞味期限が過ぎちゃうよ」
「一か月以上あるから平気だよ」
「一か月も前のお土産を渡したいとメールで送るほうがおかしいよ」
仁美の言っていることは分かるが、どうも踏ん切りがつかない。
「あと十分で休みが終わるんだけど」
「もしかすると仕事中かもしれない」
「だったら電源切るなり、マナーモードにするなり、何らかの措置はしているでしょう」
仁美は立ち上がるとわたしのところまでやってきた。そして、送信ボタンに触れているわたしの親指を上から押したのだ。