わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 周りがふっとざわついた。わたしもそのざわつきの原因を確かめるかのように目をそらした。そこにいたのは綺麗な少女といっても過言ではない美しい人だ。

「あの子、めちゃくちゃ可愛いね」

 仁美ははしゃぐような声で彼女を指さした。

 仁美の声が聞こえたのか、彼女自身仁美の声をどこかで聞いたことがあったのか、顔を上げた。

 彼女はわたしではなく、仁美に釘付けになる。

 仁美は彼女の様子がどこか違うのに気付いたのか、首を傾げた。

「あの子、こっち見てない?」

 憧れていたとはいえ、初対面なのにすぐわかるというのは、よほど彼女の頭の中に仁美の存在が明確に刻まれていたのだろう。

「あの子がわたしの言っていた茉優さん」

 わたしの言葉に、仁美はより大きく目を見張った。
 だが、彼女は平常心を取り戻したのか、目を細めると茉優さんのところまで行く。

「初めまして。わたし、ほのかの友人の高橋仁美と言います」

「ほのか?」

 彼女は仁美から光を消失させると、目を横にそらした。彼女はわたしをじっと見ると、頭を下げた。

 やっぱり彼女からは苦手意識を持たれているのだろう。幼馴染がずっと好きな相手だから。

 わたしは距離を保ち続けるわけにもいかず、二人のところまで行くことにした。
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