わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「俺はあのときのことをよく覚えていないんだけどね。ほのかさんと会って、池田さんの車に乗ってから、家に帰ったまでは覚えているけど。朝、起きたら茉優がいて、事情を簡単に聞いたよ」

「一晩中いたんだ」

 わたしはドキッとする。

「あいつは昔からそうだから。年下なのにお姉さんぶるというか、面倒見がいいというか」

「茉優さんはわたしとのこと知っているの?」

「知っているよ。おめでとうと言ってくれた」


 彼は嬉しそうに微笑んだ。

 半分は彼女の本心で、もう半分はきっと違うのだろう。そのときの彼女の気持ちを思うと、自分が招いたことなのに心が痛んだ。

 ふっとわたしはあの辛辣な瞳で雄太を見ていた、あの女性のことを思い出していた。あの女性によい感情はいまだない。だが、わたしも同じことをしていたのではないか、と。

 茉優さんと彼は付き合っていたわけではないので、全く同じとはいいがたいが、彼の生活には当たり前のように茉優さんの存在があったのだろう

「茉優さんとは会っている?」

「会っているし、この家にも来ているけど。嫌?」
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