わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 いつまでわたしは彼の彼女として傍にいていいのだろうか。いっそのこと、雄太と聖との関係が切れてしまえば、ずっと一緒にいられるのに。

 わたしはそう考えて、唇を噛んだ。

 わたしは一人っ子で兄弟はいない。だからこそ、兄弟の縁の深さというのものが全く分からない。例え、母親が違っていたとしても。だから、そうしたことを望んでいはいけないのだ。

 そのとき、家のチャイムが鳴った。聖はタオルをソファに置くと、居間を出て行った。

 玄関先から聞きなれた声が聞こえてきた。わたしは誰が来たのかすぐに気付いた。

「家の鍵を忘れちゃったの。お母さんが帰ってくるまで雨宿りさせてくれない?」

「今日?」

「ダメかな。聖の家の電気がついていたから、帰っていると思ったんだけど」

「少し待ってくれる?」

 そういうと、聖が居間に戻ってきた。彼はわたしに視線を送った。

 わたしは分かったという意志を伝えるために、首を縦に振った。

「いいよ。今日、ほのかさんが来ているんだ」

「そうなの?」

 さっきまでの弾んだ口調が一オクターブほど低くなった。


 
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