わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「そうだけど、本当にそれでいいのかなって迷っているの。卒業したら25で。もう後戻りはできないでしょう」

「茉優だったらやっていけると思うよ」

 茉優さんはソファの背もたれに寄り掛かった。

「そう言ってくれるのは嬉しいけどね。卒業したら忙しくなるから、今までみたいにお店の手伝いもできなくなる」

「そのときはそのときだよ。それに茉優が今年就職しても同じことだと思うよ」

 聖の言うことは正論だった。

 茉優さんは彼の言葉をかみしめるかのように、そっと唇を噛んだ。

 大学院って何の大学院なのだろう。ただ、言えるのは、茉優さんは聖のお店を気にしているのだろう。聖のおじいさん、おばあさんがずっと営んでいたお店を。例え、自分が彼の恋人になれなかったとしても。

 茉優さんは髪の毛をかきあげると、潤んだ目を細めた。頼りない印象を与えた。

「ほのかさんは英語が話せるんですよね?」

「少しなら」

「それを生かした仕事に就きたいとは考えませんでした?」

「考えたけど、わたしは大学のほうが妥協だったから。今はこの仕事を選んでよかったと思っている」
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