わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「時間かかりそうなの?」

「そこまでは。ちょっと説明をするくらいだから」

 仁美はわたしの肩を叩いた。

「じゃあ、二人は先に花火大会を楽しんでいてよ。わたしは陸人と一緒にいるから、後で合流しよう」

「仁美も二人と一緒に」

 そう言いかけた松永さんは言葉を飲み込んだ。

 仁美は苦笑いを浮かべて、松永さんの肩を叩いた。

 恋人同士であるわたしたちを気遣っているのだろう。

「別に気にしなくていいよ」

「いいのよ。すぐに戻ってくるから。戻ってきたら連絡するね」

 仁美は松永さんの腕を引き、人ごみの中へと入っていった。

「俺たちも行こうか」

 わたしは聖の手をつなぐ。彼は驚いた反応を見せるが、その手を握り返してくれた。

「このあたりで時間でも潰そうか」

 わたしも聖の提案を受け入れることにした。

 こうした短いやり取りをしている間にも人の数は増加の一途を辿った。あまり自由に動き回れるとはいかないようだ。わたしたちはその場に足止めされてしまっていて、そんな状況をお互いの顔を見合わせて笑っていた。

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