わたしは元婚約者の弟に恋をしました

 そのとき、雄太の隣にいた女性が彼の腕を引いた。雄太はこちらをチラ見しながらも、幼馴染にわたしの存在を見せたくなかったのか、抗うことをしなかった。二人は人ごみの中に消えて行った。

 わたしは聖の手を引いた。せっかくのチャンスだ。ここで長居をしてもどうしようもない。

「ほのかさん?」

 聖は驚いたようにわたしを見た。

「向こうのほうに行ってみようよ」

 わたしは返答を聞かずに歩き出した。聖は首を傾げながらも、わたしのあとをついてきてくれた。

 わたしは思わず雄太の消えた方向に視線を向けた。

 もう彼はどこにもいない。それに聖を見て固まっていた彼が、聖の前でわたしを追及したりはしないだろう。

 心臓の鼓動が早くなるのを感じながら、そっと唇をかみしめた。



 その後、仁美と松永さんと合流して、花火大会を楽しんだが、わたしの脳裏には雄太のあの表情が刻銘にやきついていた。
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