わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 今までわたしの気持ちをせき止めていた何かが壊れ、言葉がすっと流れ出てきた。

「そういうのって無理だよ。わたしはその前に恋人がいたし、別にあなただけしか好きになれないわけじゃない。ずっと考えていたんだけど、わたしたち別れようか」

 聖が目を見張った。

「どうして?」

「聖と付き合えて楽しかった。でも、気持ちの重みが全然違うもの」

「ごめん。そうだよね。俺はただ、ほのかさんとの関係を真剣に考えていて」

 わたしは首を縦に振った。

 聖の兄が雄太でなければ、喜んで会いに行っただろう。それほど、彼はわたしにとって大きな存在になっていた。


 なぜあのとき彼に黙って付き合おうとしたのだろう。もっと早くに告白していたらよかった。それか気付かずに被害者でいられれば良かった。だが、聖を巻き込んでしまったわたしの責任だ。

 目頭が熱くなる。だが、今泣いてはいけないと言い聞かせた。
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