わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「元気そうでよかった」
聖はそう言葉を綴った。
そのとき、冷たい風がかけぬけ、わたしたちは肩を抱いた。
「どこかに入ろうか」
「ここでいいよ。すぐに終わるから」
わたしは歩きかけた聖を制した。
聖はくすりと笑った。
「どうかした?」
「懐かしいなと思って」
「わたしとあなたが初めて出会った場所だよね」
その言葉に彼は目を見張った。
「思い出して」
「舞香に言われて、思い出した。忘れていてごめんね」
「そんなの仕方ないよ。でも、俺はほのかさんにあのとき会えてよかったと思っている。あれからずっと俺は」
聖の目が潤んでいるのが分かった。
「本当にいろいろごめんなさい。わたし、あなたに言っておかないといけないことがあるの。わたし、あなたと付き合う前に婚約破棄されたと言ったよね」
わたしは彼から視線をそらした。ああという暗い声が聞こえてきた。
「その相手は館川雄太。あなたのお兄さんだったの。彼と一年ばかり付き合っていた。でも、両親に会う日に、春奈という人に会って、雄太に帰るように言われて、その帰り道であなたに会った。最初は知らなかった。でも、あなたが雄太と一緒に写っている写真を見かけて、もしかしてと思っていた。それでも自分をだまして、雄太にあなたと一緒にいるのを見られて、弟だと聞いてもう終わりにしなきゃいけないって思ったの」
泣かないと決めたはずなのに大粒の涙が零れ落ちてきた。
泣いたらいけないと分かっているはずなのに。
「ほのかさん」
慌てた様子で聖がそばにくる。彼はわたしの頬に触れた。そのまま彼の手がわたしの体に回された。
聖はそう言葉を綴った。
そのとき、冷たい風がかけぬけ、わたしたちは肩を抱いた。
「どこかに入ろうか」
「ここでいいよ。すぐに終わるから」
わたしは歩きかけた聖を制した。
聖はくすりと笑った。
「どうかした?」
「懐かしいなと思って」
「わたしとあなたが初めて出会った場所だよね」
その言葉に彼は目を見張った。
「思い出して」
「舞香に言われて、思い出した。忘れていてごめんね」
「そんなの仕方ないよ。でも、俺はほのかさんにあのとき会えてよかったと思っている。あれからずっと俺は」
聖の目が潤んでいるのが分かった。
「本当にいろいろごめんなさい。わたし、あなたに言っておかないといけないことがあるの。わたし、あなたと付き合う前に婚約破棄されたと言ったよね」
わたしは彼から視線をそらした。ああという暗い声が聞こえてきた。
「その相手は館川雄太。あなたのお兄さんだったの。彼と一年ばかり付き合っていた。でも、両親に会う日に、春奈という人に会って、雄太に帰るように言われて、その帰り道であなたに会った。最初は知らなかった。でも、あなたが雄太と一緒に写っている写真を見かけて、もしかしてと思っていた。それでも自分をだまして、雄太にあなたと一緒にいるのを見られて、弟だと聞いてもう終わりにしなきゃいけないって思ったの」
泣かないと決めたはずなのに大粒の涙が零れ落ちてきた。
泣いたらいけないと分かっているはずなのに。
「ほのかさん」
慌てた様子で聖がそばにくる。彼はわたしの頬に触れた。そのまま彼の手がわたしの体に回された。