わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「俺も知っていたんだ。兄さんと付き合っていたことも。婚約破棄したことも。このまま関わらないのがいいと思っていた。それでも、ほのかさんの視界に入りたいと思ってしまったんだ」

 彼のわたしを抱きしめる力が強くなった。

「でも、わたしはあなたのお兄さんと」

「正直、気にするなというのは無理だと思う。兄さんのことは大好きだけど、それでも嫉妬してしまっていた。兄さんの彼女だったということに。それでもやっぱりほのかさんが俺にとっては特別なんだって嫌というほどわかった。だから、俺がききたいのは、ほのかさんがどうしたいかだよ。このまま俺と会わないほうがいいならそれでいい。でも、俺と一緒にいたいと思ってくれるなら、兄さんには俺から話をするよ。ほのかさんと一緒にいたいと思っている」

 わたしは唇を噛んだ。

 彼はわたしのほしい言葉をいつも与えてくれる。きっと彼なら兄との確執も解決してくれるだろう。恐らく聖に罪悪感を覚えている雄太が大幅に譲渡して。

 このまま甘えて彼が解決してくれるのを待つのがいいのだろう。それが一番楽だ。

 きっとこれはわたしが言わないといけないのだ。

「わたしから言うよ。何も言わずに去るといったのはわたしだもん。だから、わたしから雄太に話をする」

< 197 / 208 >

この作品をシェア

pagetop