わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 わたしは再びコーヒーを口に含むと、深呼吸した。 

 これを神様が与えてくれたチャンスかもしれないと前向きに考えることにしたのだ。

 この場で言ってしまわないと、もっと言いにくくなる。

「わたしと彼、しばらく結婚を見送ることになったの」

「何で? 彼の両親となにかあったの?」

 そう聞いてきたのは今まで黙っていた佐々井舞香だ。

 彼女は目を見張り、わたしを凝視した。

 彼の両親と限定したのは、わたしの両親と彼が合い、互いの印象がよいことを知っていたからだろう。

「違うの。彼の両親にはまだ会っていない。ただ、いろいろあって、もう少し時間をおこうということになったんだ」

 わたしは言葉を選びながら、慎重に発した。

 何かあったと匂わせたのは、それ以上突っ込まれないよにするためだ。

 彼女たちの間に驚きの表情が走った。

「そうなんだ。最近?」

「そう。本当、だからごめんね」

 わたしは会話を終わらせるために畳みかけた。

 彼女たちも「何か」を察したのか、顔を見合わせた。

「結婚を先送りにするってことは別れたわけじゃないの?」

 そう聞いてきたのは、亜津子だ。

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