わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 雄太は息を吐いた。

「分かった。俺は応援することはできないけど、受け入れはするよ」

 一応、許可をもらえたと思っていいのだろうか。聖にはありのままを伝えようとは決めた。

「わたしは帰るね」

 立ち上がろうとしたわたしを雄太が呼び止めた。

「本当に悪かった。本当に好きで、結婚したいと思っていた。でも」

 彼は言葉を濁らせた。そのあとに続く言葉を口にできなかったのだろう。

「いいよ。わたしも同じだったかもしれない」

 わたしはそういうと、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべている雄太を見た。

「わたし、雄太と結婚した後に聖に会っていたら、あなたと同じことをしていたのかもしれない。婚約破棄をしないまでも心のどこかで彼を思っていたかもしれない。だから、こうしてあなたとの婚約がうまくいかなくて、運が良かったんだってね。だって、あなたの抱いた罪悪感を抱き続けるなんてわたしにはできないもの」

 雄太は驚いたように目を見張った。

 彼はくすりと笑う。

「そんなこと、ほのかの口から聞くなんて考えもしなかった」

「だったらそれは聖の影響だよね」

「そうだな」

 彼の目がいつもより煌めいている気がした。それは差し込んだ太陽の光のせいなのか、ただの目の錯覚なのか。彼の心から湧き上がる何かがあったのか。それは最後の予想が正しい気がした。


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