わたしは元婚約者の弟に恋をしました
「さっきの話、どう思う? 婚約破棄ってことは別れようってことじゃないの?」

 そう言ったのは琴子だ。

「普通そうだよね。都合よく丸め込まれているだけじゃないの? 本当だとしても結婚しない相手とずるずる付き合っていたら、あっという間に三十超えちゃいそう」

 亜津子は口に手を当ててにやにやと笑っている。

 舞香はそんな二人の会話を無表情で聞いていた。

「さっき笑っちゃいそうになったよ。婚約破棄されても付き合っているとか言っててさ。それっていいように利用されているだけだよね」

「いろいろおごってもらっているみたいだから、お互いさまじゃないの? 琴子、あんたって本当に性格悪いよね」

「いいじゃん。最近、仕事でストレス溜まってるのよ。いいストレス解消になった。また月曜から仕事を頑張れそう」

「ストレス解消って。でも、わたしも琴子の気持ちが分かるかもね。今までぶりっこしててさ、男と付き合ったことないですって感じだったものね。男を見る目がないと言っても、さすがに婚約して破棄ってね。いい気味。顔が少しくらい良いからって、調子に乗りすぎ」

 わたしが婚約破棄の話をしたときよりも、饒舌に、それでいて楽しそうに話をする友人たちを見て、わたしの心臓がどきりとした。

 その時、わたしは自分の立場を知った。


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