わたしは元婚約者の弟に恋をしました
 不思議そうにわたしたちのやり取りを見ている門脇さんに、仁美は断りを入れた。そして、わたしの左肩を掴むと、抱き寄せた。

「いいから行ってきなさい。さっきのほのか、すごく嬉しそうな顔をしていたよ」

「嬉しそうだなんてないよ。ただ、驚いただけだけなの」

「でも、会えて嫌な気はしなかったでしょう」

 わたしは頷いた。ノーとは言えない聞き方だ。あえて、そんな聞き方をしたのだろうか。

「いつもは向こうから声をかけてくれているんだから、たまにはほのかからもかけないとフェアじゃないよ」

「ありがとう。そうするね」

 フェアとかそうしたいいかはおかしい気がしたが、彼女なりにわたしが声をかけやすいように気遣ってくれたのだろう。

 わたしは彼女の好意を受け入れ、岡本さんのところまで行くことにした。彼との距離が半歩紛ほどまで狭まった時、周りからの視線が集まるのを肌で感じ取った。岡本さんは人の気配に気づいたのか、視線に促されたのか、彼自身が振り返った。そして、彼は目を見張った。

「どうしてここに?」

 わたしが振り返ると仁美はこっちを見て微笑んでいた。

「彼女と一緒に来たの。岡本さんを見かけたから、声をかけに来た

「そっか」
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