欠けている物
2章
 アパートの下の自転車置き場に自転車を止め、自分の家に向かう。

ドアを開け、ただいまも言わずにソファに寝転がって、テレビをつけた。
 テレビでは、最近のアイドルらしき女性たちが作られた裏声で喋っている。当たり前のように笑い、喋っている彼女たちに何故か苛立ちを覚えたので、テレビを切った。

「あら隼人、帰ってたの」

台所で鼻歌を歌っていた母親がようやく気づいた。

「ごめんね、お母さん入学式行けなくて。
クラスどうだった?お友達できそう?」

先ほどのアイドルに対する腹立たしさが残っていたので、素っ気なく首を振り、自分の部屋に戻った。
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