イヌオトコ@猫少女(仮)
「いい加減起きなさい!笑結」
部屋の外からの声に、はっと目が覚める。
目の前にミィの顔があった。
手で、ちょいちょいと起こそうとしていた。
昨日はぐったり疲れて眠ってしまった。
しばらくベッドでぼんやりし、
蓮谷とのデートを思い出す。
がはっ!!
と飛び起きると、
「今何時!??」
待ち合わせは10時なのに、12時になろうとしていた。
夢なのか現実なのか、
葦海の、うひゃひゃ、という笑い声にイラッとして、
何かを叩いた記憶があった。
目覚ましだったらしい。
メールが来ていた。
『なにかあった?』
蓮谷から、一時間前の受信だ。
血の気が引くのがいたのわかった。
パニックになる笑結。
『大丈夫です!少し遅れます!』
送信するが、少しどころではなかった。
とりあえず、一番お気に入りのロングニットのワンピースに大急ぎで着替える。
髪をとかし休日しか使わないリップを塗る。
恐る恐る、ベランダにいる母に、
「お母さん、お小遣い、前借りできない?」
先輩とはいえ、高校生に奢らせるわけにはいかない。
「えっ?急に言われても!出掛ける予定だったの?」
洗濯物を見ながら母が驚く。
「う、うん、逢たちと」
デートにいくから貸して、とも言えない。
「仕方ないわね。これ持っていきなさい。全部使っちゃだめよ?!」
一万円札を渡され、緊張した。お年玉以外で五千円以上は持つこともない。
あえて、現地で待ち合わせしてもらったのが返ってあだになった。
こんなに遅れるとは。
しかも、切符を買おうとしたとき、トイレに行きたくなり、
すぐそこのコンビニが目に入った。
洗面鏡でもう一度確認して外に出たとき、一人の作業着の男とぶつかってしまい、
「す、すいません…」
一瞬のことだった。
男にバッグを引ったくられ、固まる。
「えっ…」
はっと我に返り、ようやく震える声で叫んだ。
「ど、泥棒…!!」
携帯も、さっきお母さんに借りたお金も入ってるのに。
しかし寒さのせいか人通りも少なく、走る男を怖がりよける。
と、笑結の背後から男が追い抜き、引ったくり男に飛び蹴りを食らわせた。
カーキのジャンパーにデニムの背の高い男だ。
一瞬葦海に見えた。
「えっ…?」
さらに逃げようとする男を後ろ手に捻り上げる。
「いてて!!すいませんでした!」
コンビニの店員が通報し、男を連行した。
「ほれ」
バッグを手渡すカーキ男。
「あ、ありがとう、ございます」
手に血が滲んでいた。
「あっ、絆創膏」
「ああ、おおきに。気にせんでええよ」
「…あの、大阪の、方ですか…?」
葦海にそっくりだ。とはいえずっと年上、父と同じくらいか。
「えーっと、まさかと思うが」
「なんでしょう」
「相、いや、葦海、知ってたりするか?」
「えっ?センセイのお知り合いですか?」
「よかった、当たりや!俺は護浦っちゅうもんで、入院してる病院探しに来たんや」
「あっ、はい…私のせいです。それ」
「あーよかった!案内してもろてええかな」
言われて思い出す。自分がなぜここにいたのか。
「あ"ーーっ!先輩!!」
このめかし込み様から見て恐らくデートだろう。行かせることはない。と。
まあまあまあ、と、車に誘導する。
蓮谷から、
『帰るね』
とメールが入った。
「そんなあ…」
あまりのヘコみ様に、少しだけ申し訳ないと思ってしまった。
「…あの、本当にありがとうございました。無理言って母から借りてきたお金、取られずに済みましたし」
「今どき、珍しいな。『お母さんのお金』って。ええ家族やねんなあ」
親にとってはそうまでして守ったお金より娘の身の方が心配だろう。
「ええ子やなあ、お嬢さん」
「ふ、普通だと思いますけど。自分で稼いだお金じゃないですし」
誉められて赤くなる。
そうするうちに病院に着く。
と、外の木陰で人の気配がした。
思わず目を背けた笑結。
李季が葦海を誘惑しようと迫っていた。
護浦がすたすたと建物の中に入り、何かを持って出てくる。
水のペットボトルだ。
蓋を開けながら二人に近づくと中身を頭から浴びせた。
「きゃあっ!?」
「冷てっ」
護浦の姿に驚く。
「ゴウさん!?」
笑結の姿も目に入ると、
「いや、こ、これは、その」
「殴らんでええか?いや、殴ってええか?お嬢さん」
「えっ…?」
静かに、確かめるように言った直後、
護浦の拳が葦海の頬に命中し、大きくよろめいた。
「ひっ…」
李季が驚く。
「俺が言いたいこと、わかってるよな?相」
「こ、これには、いろいろ…」
「言い訳するな。
こんな女に迫られるんは、お前に隙があったんも事実や」
護浦が本気で怒っているのは葦海にはわかった。
「ちょっと待ってください!こんな女って、なんなんですか!?
初対面の女性に対して失礼じゃないんですか!?」
黙っていられなくなった李季が護浦に食って掛かる。
「私はただ、センセイが心配で」
「ほほう?それであんなに、べったりと。誘惑なさってたワケですね?」
「あ〜ら、イヤですね下衆の勘繰り」
「強かなオナゴやのう」
呆れた顔で、残りの水を頭から浴びせる。
「なに!すんだよ!?この…」
ペットボトルを持った手を叩き、
股間に蹴りを入れようとするも、
もう片方の手で塞ぎ、足を掴んで持ち上げる。
バランスを崩し尻餅をつく李季。
「きゃあっ!?」
短め丈のタイトスカートがめくれかけて慌てる。
「男がみんな落とせると思ったら大きな間違いやで。
ベッピンが台無しや。ふん!俺の嫁を見習え」
生まれて初めて屈辱を味わわされ、真っ赤になって悔しがる。
「本当にどうなっても知らないよ!?お前なんかクビにしてやる!!
パパ理事長なの知らないね!?」
捨て台詞を残し、逃げるように去った。
「すみませんでした!!」
土下座して護浦に平謝りする葦海。
さすがの葦海も護浦には頭が上がらないようだ。
「俺はええ。お嬢さんに謝れ」
静かに示す。
「…べ、べつに、私は…」
「悪かった!!」
そのまま笑結にも土下座する。もう護浦の言いなりだ。
「さあてと。あとはモンスターがどう出るかや」
目を細めて辺りを見る。騒ぎに、遠巻きに人だかりができていた。
部屋の外からの声に、はっと目が覚める。
目の前にミィの顔があった。
手で、ちょいちょいと起こそうとしていた。
昨日はぐったり疲れて眠ってしまった。
しばらくベッドでぼんやりし、
蓮谷とのデートを思い出す。
がはっ!!
と飛び起きると、
「今何時!??」
待ち合わせは10時なのに、12時になろうとしていた。
夢なのか現実なのか、
葦海の、うひゃひゃ、という笑い声にイラッとして、
何かを叩いた記憶があった。
目覚ましだったらしい。
メールが来ていた。
『なにかあった?』
蓮谷から、一時間前の受信だ。
血の気が引くのがいたのわかった。
パニックになる笑結。
『大丈夫です!少し遅れます!』
送信するが、少しどころではなかった。
とりあえず、一番お気に入りのロングニットのワンピースに大急ぎで着替える。
髪をとかし休日しか使わないリップを塗る。
恐る恐る、ベランダにいる母に、
「お母さん、お小遣い、前借りできない?」
先輩とはいえ、高校生に奢らせるわけにはいかない。
「えっ?急に言われても!出掛ける予定だったの?」
洗濯物を見ながら母が驚く。
「う、うん、逢たちと」
デートにいくから貸して、とも言えない。
「仕方ないわね。これ持っていきなさい。全部使っちゃだめよ?!」
一万円札を渡され、緊張した。お年玉以外で五千円以上は持つこともない。
あえて、現地で待ち合わせしてもらったのが返ってあだになった。
こんなに遅れるとは。
しかも、切符を買おうとしたとき、トイレに行きたくなり、
すぐそこのコンビニが目に入った。
洗面鏡でもう一度確認して外に出たとき、一人の作業着の男とぶつかってしまい、
「す、すいません…」
一瞬のことだった。
男にバッグを引ったくられ、固まる。
「えっ…」
はっと我に返り、ようやく震える声で叫んだ。
「ど、泥棒…!!」
携帯も、さっきお母さんに借りたお金も入ってるのに。
しかし寒さのせいか人通りも少なく、走る男を怖がりよける。
と、笑結の背後から男が追い抜き、引ったくり男に飛び蹴りを食らわせた。
カーキのジャンパーにデニムの背の高い男だ。
一瞬葦海に見えた。
「えっ…?」
さらに逃げようとする男を後ろ手に捻り上げる。
「いてて!!すいませんでした!」
コンビニの店員が通報し、男を連行した。
「ほれ」
バッグを手渡すカーキ男。
「あ、ありがとう、ございます」
手に血が滲んでいた。
「あっ、絆創膏」
「ああ、おおきに。気にせんでええよ」
「…あの、大阪の、方ですか…?」
葦海にそっくりだ。とはいえずっと年上、父と同じくらいか。
「えーっと、まさかと思うが」
「なんでしょう」
「相、いや、葦海、知ってたりするか?」
「えっ?センセイのお知り合いですか?」
「よかった、当たりや!俺は護浦っちゅうもんで、入院してる病院探しに来たんや」
「あっ、はい…私のせいです。それ」
「あーよかった!案内してもろてええかな」
言われて思い出す。自分がなぜここにいたのか。
「あ"ーーっ!先輩!!」
このめかし込み様から見て恐らくデートだろう。行かせることはない。と。
まあまあまあ、と、車に誘導する。
蓮谷から、
『帰るね』
とメールが入った。
「そんなあ…」
あまりのヘコみ様に、少しだけ申し訳ないと思ってしまった。
「…あの、本当にありがとうございました。無理言って母から借りてきたお金、取られずに済みましたし」
「今どき、珍しいな。『お母さんのお金』って。ええ家族やねんなあ」
親にとってはそうまでして守ったお金より娘の身の方が心配だろう。
「ええ子やなあ、お嬢さん」
「ふ、普通だと思いますけど。自分で稼いだお金じゃないですし」
誉められて赤くなる。
そうするうちに病院に着く。
と、外の木陰で人の気配がした。
思わず目を背けた笑結。
李季が葦海を誘惑しようと迫っていた。
護浦がすたすたと建物の中に入り、何かを持って出てくる。
水のペットボトルだ。
蓋を開けながら二人に近づくと中身を頭から浴びせた。
「きゃあっ!?」
「冷てっ」
護浦の姿に驚く。
「ゴウさん!?」
笑結の姿も目に入ると、
「いや、こ、これは、その」
「殴らんでええか?いや、殴ってええか?お嬢さん」
「えっ…?」
静かに、確かめるように言った直後、
護浦の拳が葦海の頬に命中し、大きくよろめいた。
「ひっ…」
李季が驚く。
「俺が言いたいこと、わかってるよな?相」
「こ、これには、いろいろ…」
「言い訳するな。
こんな女に迫られるんは、お前に隙があったんも事実や」
護浦が本気で怒っているのは葦海にはわかった。
「ちょっと待ってください!こんな女って、なんなんですか!?
初対面の女性に対して失礼じゃないんですか!?」
黙っていられなくなった李季が護浦に食って掛かる。
「私はただ、センセイが心配で」
「ほほう?それであんなに、べったりと。誘惑なさってたワケですね?」
「あ〜ら、イヤですね下衆の勘繰り」
「強かなオナゴやのう」
呆れた顔で、残りの水を頭から浴びせる。
「なに!すんだよ!?この…」
ペットボトルを持った手を叩き、
股間に蹴りを入れようとするも、
もう片方の手で塞ぎ、足を掴んで持ち上げる。
バランスを崩し尻餅をつく李季。
「きゃあっ!?」
短め丈のタイトスカートがめくれかけて慌てる。
「男がみんな落とせると思ったら大きな間違いやで。
ベッピンが台無しや。ふん!俺の嫁を見習え」
生まれて初めて屈辱を味わわされ、真っ赤になって悔しがる。
「本当にどうなっても知らないよ!?お前なんかクビにしてやる!!
パパ理事長なの知らないね!?」
捨て台詞を残し、逃げるように去った。
「すみませんでした!!」
土下座して護浦に平謝りする葦海。
さすがの葦海も護浦には頭が上がらないようだ。
「俺はええ。お嬢さんに謝れ」
静かに示す。
「…べ、べつに、私は…」
「悪かった!!」
そのまま笑結にも土下座する。もう護浦の言いなりだ。
「さあてと。あとはモンスターがどう出るかや」
目を細めて辺りを見る。騒ぎに、遠巻きに人だかりができていた。